「私の経験で言えば、検索エンジンをごく普通に使いこなせる人であれば、おおむね3時間もあれば、インターネット上に存在しているさまざまな情報を収集し、その分野に関して専門家に近い認識を得られるようになります。」
3時間で「専門家」になる私の方法
佐々木 俊尚

■内容紹介(amazonより)
ベストセラー『グーグル--Google 』の著者が自らの情報収集、分析手法を初公開!
インターネットの登場で、情報は「すぐ手の届くところ」に存在するようになりました。かつては途方もない作業が必要だった情報収集・整理が、パソコン1台を使いこなせば、今は3時間程度でできるようになったのです。インターネットを中心にした情報収集であれば、ある程度の専門知識を仕入れることが非常に簡単になりました。
時間もかかりません。
検索エンジンをごく普通に使いこなせる人であれば、3時間もあれば大丈夫でしょう。3時間あれば、インターネット上に存在している膨大な量の情報から必要なものを取捨選択し、それを自分の知見として取り込んで、その分野に関して専門家に近い知識を得られるのです。
■目次
まえがき
第1章 激変した「情報をめぐる環境」
第2章 新聞記者は無意識に「マトリックス」を描く
第3章 クオリアを身につけよう
第4章 実践・3時間で専門家になる PART1
第5章 実践・3時間で専門家になる PART2
第6章 ニューロン型情報収集のノウハウ
第7章 セレンディピティを実現する
あとがき
■mmmの書評
いや、もちろん「3時間で専門家」になれると信じて釣られ読みしたわけではないっすよ。仕事上未知の業界と接することがわりと頻繁にあるため、情報収集について今以上のやり方を得るきっかけになるか、というのが今回の目的。
読後感で言うと、「勉強になった」が6、「?」が4かなあ。7:3でもいいんですが、やっぱり「?」は残るんです。僕が読めてないのかもしれないけれど。
著者の主張の出発点。「かつては情報を手元に集めることが情報収集だった。現代では常に膨大な情報が目の前にあるので、そこから必要なものを選び出すのが情報収集である」。当然これには完全同意。そこから著者はインターネットを使って、あるテーマについての網羅的な(=「専門家」的な)情報理解まで、効率的に持っていく自身の方法論を展開します。
方法の詳細は本書に具体例を交えて書かれていますので興味のある方は読んでいただけばよいとして、僕が「勉強になった」と思うポイント。著者は「まず知りたいテーマの周辺世界、その概略をつかむべし」と教えます。これもまあ普通なんですけど、そのために著者が実践している方法は、今の僕のGoogle検索一本槍よりもずっといいと感じました。著者はウェブサイトを
1、新聞記事データベース
2、一般ウェブサイト
3、個人・企業ブログ
4、掲示板
に分類し、1→4の順に信用度が高く、4→1の順で生の声が聞けると順列をつけています。著者の方法は、これを1から4へと順番に読み解いていくことで、あるテーマの「現状」とそこに至るまでの「経緯」、関連する人々の「感情」などを階層ごとに吸い上げて、テーマの「世界」全体を「皮膚感覚」で捉えようとするものです。
単なる検索に対してこの方法の優れた点は、より体系立てて情報を取り入れることができることじゃないかと思います。階層別に情報収集するための、新聞記事やブログ、掲示板のそれぞれに特化した検索方法も書かれているので、これは試す価値ありだと感じました。
さて著者の方法論は、あるテーマの概略を把握したのち「一点を掘り下げる」情報収集へと進みます。本書の具体例では、「少子高齢化」をテーマに選んで、まずはその全体像の概略を捉え、さらに検索での「セレンディピティ(=偶然の出会い)」によって得られた「葬祭業の現状」という一点を掘り下げます。そして、最終的には「変わりゆく葬儀ビジネスと今後の可能性」という深い情報へと辿り着きます。
…が、ここが僕の「?」なポイントでして。
この例で、著者は何の「専門家」になりえたのか?ってことなんです。普通に考えればスタート地点である「少子高齢化の『専門家』」だと思うんですが、少子高齢化についてはあくまで概略を理解したに留まっているように思えます。そこから掘り下げた「葬儀業界」は一事象に過ぎないので、葬祭業についての見識を深めたことをもって「少子高齢化」を知ったというのはおかしな話でしょう。
あるいは「葬儀ビジネスの『専門家』」? 「偶然の出会い」で辿り着いたものを結論とするのはちょっと無理を感じますし、これは違うでしょう。調べ始めた時点では思いも寄らなかった分野の専門家になれちゃうことが実用的だとはあまり思えません。
…やっぱり「?」です…。読み落としたかなあ
この「?」を埋めるために、考えられることがふたつはありそうです。ひとつは「紹介された手法は、より大きな情報収集の1サイクルに過ぎない」。少子高齢化の「専門家」になるためには、例に挙げた葬儀ビジネスについてと同じように他の事象についても掘り下げ、それを繰り返すべし、と。これなら理解できます。
もうひとつの可能性は「著者が元新聞記者で、今もジャーナリストだから」。ジャーナリストにとっての成果とは、トピックの発見である、と。少子高齢化という背景から生まれた事象の一例であっても、しかもそこに辿り着いたのがまったくの偶然であっても、ジャーナリストなら成果(記事とか本とか)へとつなげられます。僕の仕事とはちょっと違いますけど、タイトルには「私の方法」とちゃんと書いてありますし、納得はできますね。
本書はあくまで情報収集のお手本のひとつ。すでにインターネットを使って情報収集している人にとっては、革新的なノウハウが書かれているということはありませんし、それに長けた人ならば何ひとつ目新しいことはない、なんてこともありそうです。でも僕のような現代一般レベルの情報収集スキルで固定してしまっている者には、それを打破するために見習うべき実務的なお手本となりうると思いました。
こういう手本の数々からいいとこ取りのサンプリングを繰り返して、いずれ「私の方法」と言えるやり方を見つけ出すのがベストなんでしょうね。
3時間で「専門家」になる私の方法
佐々木 俊尚

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