「もし、自分の運命を生きてさえいれば、
知る必要のあるすべてのことを、人は知っている。
しかし夢の実現を不可能にするものがたった一つだけある。
それは失敗するのではないかという恐れだ」
アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)
Paulo Coelho

■内容紹介(amazonより)
羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて。長い時間を共に過ごした羊たちを売り、アフリカの砂漠を越えて少年はピラミッドを目指す。「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる」「前兆に従うこと」少年は、錬金術師の導きと旅のさまざまな出会いと別れのなかで、人生の知恵を学んで行く。欧米をはじめ世界中でベストセラーとなった夢と勇気の物語。
■mmmの書評
…ねえあなた、夢はありますか。
もしこう訊かれたら、俺はすぐに答える。「Yes. I have a dream.」
…ではあなた、それを手に入れるための挑戦をしていますか。
次にこう訊かれたら、俺はきっと何も言えなくなる。
そして相手と、何より自分を納得させるための理由を探すんだ。
もちろん理由ならいくつでも見つけることができる。
でもそのどれもが自分を納得させることができないこと、
それは自分へのごまかしだということを、俺は知っている。
…と、人生の夢から目をそらしながら自分をごまかし生きていることにどんだけかの後ろめたさを感じてる人なら、この「アルケミスト」はズキズキくると思います。ええ、僕、そうでしたね。おとぎ話のくせに(失礼)、見透かしてきやがる。
パウロ・コエーリョの世界的ベストセラーである本書は、人生の希望、夢に向かうための教訓を詰め込んだ童話的な物語。ストーリーは至極単純、メッセージもとってもシンプル。すなわち
「自分の夢を追い求めてこそ、本当の人生。そして誰もがその本当の人生を生きることができる。ただ、自らそれを止めることさえしなければ」。
思い通りにいかないことの多い時代、未読ならぜひおすすめしたい作品。
さくっと読めて、しかもその後への影響力大ではなかろうか、と思います。
あらすじ。物語の主人公、アンダルシアの羊飼い少年サンチャゴは、いろいろな前兆から自分の人生の宝物がエジプトのピラミッドにあることを知ります。で、それを追い求めて旅に出ますが、その途上でこれまたいろんなことが起こります。
人に騙され資金を失う、自分を必要してくれる人に出会い現実的な成功をおさめる、いかんともしがたい外的要因に行く手を阻まれる、安住するに足る街を訪れる、しかもそこで名声と財産を得る、さらに運命の人に出会い、恋をする…。などなど。
これらサンチャゴくんの身に起こることのすべては、「人が自分の夢とそのための挑戦をあきらめる理由」たちです。言ってしまえば「いいわけ」。そこには悪いことばかりではなくて、すごくよいこともある。けれど、どんなによくてもそれは求めていた宝物じゃない。そう、人生には自分の夢を追い続けること以外にも「よいこと」がたくさんあるからややこしい。
旅の途中でそういうよいものたちを手に入れて、サンチャゴくんの気持ちも揺れ動きます。ああ、まるで僕やあなたのようではないか。
本書全編を通じて胸にズキズキくるけど、僕が個人的にいちばん印象に残ってる部分、夢をあきらめようとするサンチャゴくんと、旅の指導者である錬金術師(alchemist)との会話シーンを引用。ちょっと長いですが。
少年はピラミッドの話をしたくなかった。彼の心は重く、昨晩から物悲しい気分だった。宝物を探し続けるということは、ファティマを捨てなければならないことを意味していた。
「わしがおまえを案内して、砂漠を渡ろう」と錬金術師は言った。
「僕はオアシスにずっといたいのです」と少年は答えた。「僕はファティマを見つけました。僕にとって、彼女の方が宝物よりも大切です」
「ファティマは砂漠の女だ」と錬金術師が言った。「彼女は、男は戻ってくるために遠くへ行かなければならないと知っている。それに、彼女はすでに自分の宝物を見つけたのだ。それはおまえのことだ。だから、彼女はおまえにも、おまえが探しているものを見つけてほしいと思っているのだ」
「では、僕がここにとどまったらどうなるのですか?」
「どうなるか教えよう。おまえはオアシスの相談役になるだろう。たくさんの羊とたくさんのらくだを買うためのお金も、十分に持っている。ファティマと結婚して、二人とも一年間は幸せに過ごす。おまえは砂漠が好きになり、五万本のやしの木の一本いっぽんを知るだろう。それらは、世界が刻一刻変わってゆくのを証明しながら育っていくだろう。おまえは前兆の読み方がどんどんうまくなってゆく。それは、砂漠が最高の先生だからだ。
二年目のいつ頃か、おまえは宝物のことを思い出す。前兆が執ようにそのことを語りかけ始めるが、おまえはそれを無視しようとする。おまえは自分の知識をオアシスとその住民の幸せのために使う。族長はおまえのすることに感謝する。そして、おまえのらくだは、おまえに富と力をもたらす。
三年目にも、前兆はおまえの宝物や運命について、語り続けるだろう。おまえは夜ごとにオアシスを歩きまわり、ファティマは、自分がおまえの探求のじゃまをしたと思って、不幸になる。しかしおまえは彼女を愛し、彼女はおまえの愛にこたえる。おまえは、ここにいてくれと彼女が決して言わなかったことを思い出す。砂漠の女は、自分の男を待たなければならないと知っているからだ。だからおまえは彼女を責めはしない。しかし、おまえは砂漠の砂の上を歩きながら、もしかして自分は行けたかもしれない……もっとファティマへの自分の愛を信じることができたかもしれない、と何度も考えてしまう。なぜなら、おまえをオアシスに引き止めたものは、二度と戻って来ないのではないかというおまえ自身の恐れだったからだ。その時、おまえの宝物は永久に埋もれてしまったと、前兆は語るだろう。
そして四年目のいつか、前兆はおまえを見捨てるだろう。おまえがもう、それに耳を傾けるのを止めてしまうからだ。部族の長たちはそれを発見して、おまえは相談役の地位を解かれてしまう。しかし、その時にはおまえは金持ちの商人になっていて、多くのらくだや商品を持っている。おまえはその後の人生をずっと、自分は運命を探求しなかった、もうそうするには遅すぎると思って暮らすだろう。
男が自分の運命を探求するのを愛は決して引き止めはしないということを、おまえは理解しなければならない。もし彼がその追求をやめたとしたら、それは真の愛ではないからだ……大いなることばを語る愛ではないからだ」
まもなく終わる今年を、僕はとてもいい一年だったと振り返ると思うんですよね。いろいろとよいこともあったから。だからこそこの部分がいちばん印象に残ってるのかもしれんのです。きっとその人その人の状況によって響くポイントは違うのだろうと思いますけど。
「おまえはその後の人生をずっと、自分は運命を探求しなかった、もうそうするには遅すぎると思って暮らすだろう。」
僕にとっては、この短刀を直入されちゃう部分はなかなかに痛い。でもこの「アルケミスト」をこのタイミングで読んだこと、これがきっと前兆ってやつなんだろうと思いました。もちろんこの前兆を無視することもできるけど、僕は「さあもう一度、明日から何をしようか」と思いましたし、今も思っていたりします。いつも通りに根が単純なもので。でも読んでよかったです。
さて、最後に上記引用シーンの直後のサンチャゴくんの決意。
「僕は、あなたと一緒に行きます」と少年は言った。
彼はすぐに心の中に平和を感じた。
…うん。やがてくる新しい年、あなたと僕の心にこんな平和がありますように。
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スピリチュアル本として読むひともおられるよう。
僕はちょっと違いますけどね。
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