2008年8月26日火曜日

『本を読む本』 モーティマー・J・アドラー 著


『これは「本を読む人」のための本である。
「これから本を読みたい人」のための本でもある。
つまり、「読む」ことによって知識を得、理解を深め、
すぐれた読書家になりたいと思う人のために書かれた本である。』



本を読む本 (講談社学術文庫)
Mortimer J. Adler Charles Van Doren 外山 滋比古
4061592998



■内容紹介(amazonより)
本書は、1940年米国で刊行されて以来、世界各国で翻訳され読みつがれてきた。読むに値する良書とは何か、読書の本来の意味とは何かを考え、知的かつ実際的な読書の技術をわかりやすく解説している。初級読書に始まり、点検読書や分析読書をへて、最終レベルにいたるまでの具体的な方法を示し、読者を積極的な読書へと導く。単なる読書技術にとどまることなく、自らを高めるための最高の手引書。


■目次は記事末に↓


■mmmの書評

あなたは読書が上手ですか?…と、あえて訊いてみる。


読書が上手い、下手だとはあまり使わない表現です。読書があまりにもパーソナルな行為であるために、果たして自分が上手か下手なのかについて、普通はあまり考える機会がないんですよね。速さと量以外に人と比べられる明白なものさしもないですし、みんながみんなそれぞれ自己流で読書をしてるのは、当然と言えば当然です。


で、これはその自己流の読書を見直すきっかけになる本。読書の技術と方法論、そして本と向き合う姿勢について指南した実践書です。


本書の主要なテーマはみっつ。

・読書を成功させるためには「積極的な読書」が必要である。積極的な読者であるために、私たちはいかに読むべきか。また理解し、考えるべきか。
・人生は有限で、本は無尽蔵にある。ある本が、読む価値のある良書かそうでないかを効率よく見極めるために私たちはどう読むべきか。
・読書は、ある本を読み、それを理解することが究極の目的でない。あるテーマに従って複数の本を理解し、それらには書かれていない自分なりの考えを導くことが本当の目的である。

…といったところでしょうか。これらについての方法論が極端なくらい体系的に整理され、またそれが理屈っぽい語り口調で語られるため、まるでお固い先生の講義を受けてるような感じです。読んでる最中には筆者に対して「面倒くさい人だな、この人」と思うこともちょくちょく。


ですが、本を楽しむのに理屈やらノウハウなんていらねえ、と放り出す勿れ。僕は昔からわりと本読みでしたが、数年前にこれを読んだのをきっかけにして長年の自己流読書スタイルにも変化があったのは事実です。


こうやってちょこちょこ書評を書いてるのも(書くこと自体じゃなくて考えることが目的だけど)、また以前は完全スルーで見向きもしなかった目次を、特に今回は手打ちしてまでここに載せてるのも、この本を読んだからこそです。


僕は今もこの本をときどき読み返しています。それは自分にはまだ本書が教えてくれる「理想の読書」が達成できていないから。やっぱり自分の好きなことに技術のレベルがあるなら上手くなりたいし、たまに読み返しては上達の方向を再確認します。


それぞれの自己流がまかり通る読書という行為に関して「上手いってのはこういうことだぜ」というものさしを与えてくれること。それが、この本自体が長い間「良書」とされてきたいちばんの理由です。



…あとこれ、ほとんど本を読まない人には向いてません。ある程度の読書習慣がある人で、「読書の上達が速読法ってのはなんか違うんじゃねえの?」とか感じる人向きですかね。もしそうならおすすめします。




本を読む本 (講談社学術文庫)
本を読む本 (講談社学術文庫)Mortimer J. Adler Charles Van Doren 外山 滋比古

講談社 1997-10
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読書術 (岩波現代文庫) あなたもいままでの10倍速く本が読める 「困った人たち」とのつきあい方 (河出文庫) 第1感  「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい (翻訳) 勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考法の基本と実践


ま、読書は楽しけりゃいいってのも、じゅうぶんアリですけれど。


■「本を読む本」目次

日本の読者の皆さんへ モーティマー・J・アドラー

第1部 読書の意味

1.読書技術と積極性
積極的読書/読書の目的-知識のための読書と理解のための読書/「読む」ことは「学ぶ」ことである-「教わること」と「発見すること」の違い/教師のいる場合、いない場合
2.読書のレベル

3.初級読書-読書の第一レベル
読みかた学習の諸段階/段階とレベル/高等教育と読書
4.点検読書-読書の第二レベル
点検読書1-組織的な拾い読み、または下読み/点検読書2-表面読み/読書の速度/目の動き/「理解すること」
5.意欲的な読者になるには
積極読書への四つの質問/本を自分のものにするには/書き込みの方法/読書習慣を身につける/多くの規則から一つの習慣へ

第2部 分析読書-読書の第三レベル

6.本を分類する
分類の重要性/書名から何がわかるか/理論的な本と実践的な本/理論的な本の種類
7.本を透視する
構想とプロット-本の統一/アウトラインをつかむ/読む技術と書く技術/著者の意図を見つける/分析読書の第一段階
8.著者と折り合いをつける
著者の使う言葉に注意する/キー・ワードを見つける/専門用語と特殊な語彙/単語の意味をつかむ
9.著者の伝えたいことは何か
文および命題/キー・センテンスを見つける/命題を見つける/論証を見つける/著者の解決を検討する
10.本を正しく批評する
学ぶことの効用/修辞の役割/判断保留の重要性/けんか腰はよくない/反論を解消する
11.著者に賛成するか、反論するか
思い込みと判断/著者の主張は果たして妥当か/論証は、果たして完全と言える/分析読書の第三段階
12.読書の補助手段
「経験」の役割/他の本から手助けを得る/注釈書や抜粋参考書の使いかた/辞書の使いかた/百科事典の使いかた
第3部 文学の読みかた

13.小説、戯曲、詩の読みかた
文学を読むとき、してはならないこと/文学を読むための一般法則/小説の読みかた/戯曲の読みかた/叙情詩の読みかた
第4部 読書の最終目標

14.シントピカル読書-読書の第四レベル
シントピカル読書における点検の役目/シントピカル読書の五つの段階/客観性はなぜ必要か/シントピカル読書の実例-進歩の観念について/シントピコンとその利用法/シントピカル読書の原理について/シントピカル読書のまとめ
15.読書と精神の成長
良書が与えてくれるもの/本のピラミッド/生きることと精神の成長
日本人の読書-訳者あとがきにかえて


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2008年8月5日火曜日

『人のセックスを笑うな』 山崎ナオコーラ 著


「もし神様がベッドを覗くことがあって、
誰かがありきたりな動作で自分たちに酔っているのを見たとしても、
きっと真剣にやっていることだろうから、笑わないでやって欲しい。」


人のセックスを笑うな (河出文庫)
山崎 ナオコーラ
4309408141

■内容紹介(amazonより)
19歳のオレと39歳のユリ。恋とも愛ともつかぬいとしさが、オレを駆り立てた…美術専門学校の講師・ユリと過ごした日々を、みずみずしく描く、せつなさ100%の恋愛小説。「思わず嫉妬したくなる程の才能」など、選考委員に絶賛された第41回文藝賞受賞作/芥川賞候補作。短篇「虫歯と優しさ」を併録。


■mmmの書評


近ごろ心掛けていること。「小説を読む時は先入観や偏見を、(最初からまったく持たないってのは無理なので)読み始めから読み終わりまでのあいだだけはどこかに押しやっておくよう心掛ける」。僕は元来人格的には偏見の塊でありますので、これに注意して読むだけでそうしなかったよりも素直にその小説に向きあえる気がします。

さてなんでこんなことを書いたかというと、たぶんこの作品は以前の僕なら自分でかけた色眼鏡の色が濃すぎて、ニュートラルに読めなかっただろうと思うから。実際タイトルもペンネームもちょっと拒否反応ありますし、内容は一見さらっとしているし、結構売れたようだし、と偏見のきっかけは満載です。

でもこの小説、良かったな、というのが読後の正直な感想です。

比べちゃなんですが、同じく失恋・喪失とそこからの救済をモチーフにした(で、同じく売れた)、どっかの中心でなんとか叫んじゃったやつとは、根本的にモノが違います。筆者の作品を読んだのはこれが最初なのであくまで表題作と短編ひとつの印象なのですが、「どうやったって主観ってやつは他から隔絶されている。でも、それと他とが連絡するためのかすかな何かはちゃんとある」、ってことがこの人のテーマなのかなと思いました。

文体は一人称、主人公「オレ」の視点で「ユリ」との不倫の恋やそれにまつわること、またそれとはまったく関連しないことが淡々と思案され語られます。一方の「ユリ」やその他の登場人物たちは、まったくといっていいほど内面が見えてきません。

同じ文庫に収録された「虫歯と優しさ」にもそれは顕著で、主人公は失いそうな恋について思い悩みながらも恋人の事情や思惑はまったくわからずに、ただ治療中の虫歯などごく私的なことについて思いを巡らせることしかできません。

ふたつの作品は、設定の違いこそあれ同じテーマを同じかたちで同じモチーフを使って描いています。それは、「どうして、こちら側にあるものはどうでもいいことだって見えるのに、あちら側にあるものは大切なことすら見えないのか」であり、「しかし、あちら側と通じることもまたできていた」ってことだろうと思います。で、主人公たちがそれを失う物語を通して、隔絶された主観と主観のあいだに連絡する、かすかなものの価値を描こうとしたのではないか、と思います。

もし僕たちの抱える隔絶を超越した神様がいたとして、そんな僕たちのかすかなつながりと、それを慈しむ(あるいは失って悲しむ)姿を見ても、「笑うな」。失恋をしたことがある人ならきっと誰でも理解できるごく個人的・主観的な顛末から、僕らの不自由さに与えられたささやかな、でも確かな救いの存在を浮き彫りにしようとした作品なのだと思いました。


…追記として、表現について。
冒頭の一文から始まって、短い物語の随所に「お、いいじゃん」と思う表現が散りばめられていました。こういう風に、自分がまだ読んだことのない文章表現を見せられると、やっぱり嬉しくなりますね。どっちかと言うと、こっちの方が読んでよかったと思う点だったりしました。


人のセックスを笑うな (河出文庫)
山崎 ナオコーラ

人のセックスを笑うな (河出文庫)
映画「人のセックスを笑うな」オリジナルサウンドトラック カツラ美容室別室 浮世でランチ 指先からソーダ 論理と感性は相反しない
by
G-Tools


新しい作家さんに対する積極性に欠けるんですよね。僕。
よくないことですね。



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